ネットブックの果たした役割

先日、電車の中でスマホを触りながら、ふと思い出した。
『そういえばネットブックってどうなったっけ?・・・あ〜Microsoft上手い事やったな』

モバイル通信カードとセット販売する等の販売方法で売価を大幅に下げ100円PC等と呼ばれ人気を博したネットブックも、2010年のiPadの登場以降、これに追随する形で様々なタブレット商品が発表され、価格帯が近かった事も有るからか、話題もユーザーも新しい方へ流れて行き、その存在を小さくしていった。

当初国外で発売されていたモデルにはLinuxが採用されており、いよいよLinuxがコンシューマーの選択肢の一つになるのかと少しワクワクしたのを覚えている。
私も自宅のPCにもUbuntuを入れて遊んだ事を思い出す。
ただ、Microsoftもこの状況を放っておく訳も無く、Windows XPのサポート期限を限定的に延長する事で、ネットブックへ参画した。

 

このとき既にWindows Vistaは発売されていたが、市場の反応は悪く思うように移行が進んでいなかった。
普通に考えればVistaネットブックに採用すれば良いのだが、低予算のネットブックのスペックでは下位のHome Basicでもスムーズに動作させるのは難しく苦し紛れの対応のようにも見えた。
ちなみにネットブックという名称は、XPを提供する条件としてスペックを低く設定した物を、通常のPCと差別化する為にMicrosoftが付けた名前だ。

じゃぁ低スペックにする必要がないじゃないかとも思うが、低価格帯で勝負する必要が有るのだから仕方ない。

 

さて、ネットブックは『100円PC』等のキャッチーな広告のインパクトも有り爆発的に広がる事になるが、そこは低スペックという事と徐々にコンシューマーのコンテンツもパワーが必要になって来ていた事、セットで販売されたモバイル通信カードのエリアがなかなか広がらなかった事等が災いし、低スペックを想定せず、『フルWindowsが使える』と思って購入した人からは『使いえない』『おもちゃ』等と言われ、低スペックを想定していた人からも『Windowsが十分動かないならスマホとかで十分』と徐々に需要を減らしていった。

その形にもデメリットが有ったのだろう。
一見ノートパソコン(まぁそうなのだが)、しかもWindowsが動いている。
でも実際はまんまり動かないみたいな。

私も当時、ブログを執筆するノートとペンになればと購入を考えたが、どうせ荷物が増えるならと、欲が出てしまい、遂には購入を踏みとどまった思い出が有る。

『物足りないオモチャ』と評価されてしまうことになったネットブックは、新興国の教育分野向けに開発が進んでいたOLPCがその起源だ。

それ自体はなかなか日の目を見なかったものの、コンセプトを模倣する形でネットブックが産まれてきた。

そもそもがそういう理由で企画された最低限スペックのPCだ。
ただ、どこかの国でより安い物が発売されるという情報が流れると、自国でも発売して欲しいと思うのが世の常。
OLPCの意図は放っておかれる事になり、それ自体が発売されたのではなく『格安PC』というコンセプトとコピーが一人歩きし、ネットブックというカテゴリを生み出す事になった。

しかし、OLPC自体ではなかったので、新興国に普及もしていなかったり、ギリギリのスペックであるが為に様々にコストを削ったり努力はするものの十把一絡げ的に扱われてたり、シェアを確保する為に本意ではないソフトを提供したり、十分だろうと買ってみると全く思っていたものと違ったり、おまけに2年縛りの通信カードがついてきたり・・・。

なんだかデメリットが多い気がする。

表面だけを見ると悲運のカテゴリーの様に見えてしまう。
まぁ悲運なのはそうかもしれないが、角度を変えるとまた違った事が見えてくる。
広く普及した事でその不満を一身に受けてVistaへの不満を軽減させ、7登場までの場繫ぎ的なXP投入の理由を作りグロスでなんとなくOKにしてみたり、その後のウルトラブックタブレットの需要を顕在化させたり、モバイル通信の普及にも貢献した様にも思うし、おまけに立つ鳥後を濁さず的にフェードアウトした。

XPのサポート終了という話の時に、
『じゃぁネットブックどーするんだよ!』という声は聞こえなかった。

はい、ここまで考えて冒頭の“あ〜Microsoft上手い事やったな”に繋がる。
各方面の対応などは様々指摘や批判はあるものの、ネットブック自体は十二分にその役割を果たしたと思うのは私だけだろうか。

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